MARINE ORGANISM


MUVEIL MAGAZINE
vol.5
2020 HIGH SUMMER
MARINE ORGANISM

強まる日差しが、初夏の訪れを感じる日が多くなってまいりました。今回のMUVEIL MAGAZINE vol.5では、2020 HIGH SUMMER COLLECTIONに関連して海洋生物を特集いたします。

MARINE ORGANISM

HIGH SUMMER COLLECTIONに登場するモチーフは、絶滅の危機に瀕している海洋生物たち。伊豆諸島各地にもかつて生息し現在は絶滅種とされるニホンアシカ、水族館や動物園の人気者だが、絶滅危惧種に指定されているラッコなど、調べていくと恥ずかしながら意外と思える様々なこと事実に驚かされました。



学術誌「Nature」に掲載された論文によると、温暖化からの逃げ場がほとんどない海の変温動物は、陸の変温動物に比べて2倍のペースで生息地から消え去っているそうです。環境の変化によって棲家が奪われているいきものたちとの共生共存の願いを込めながら、MUVEILらしいポジティブなモチーフとして、それを落とし込みました。



オーガニックコットンを原料とした生地を使用したアニマルTシャツは、実は過去のコレクションで使用した生地をパッチワーク部分に再利用。MUVEIL(ブランド)として、身近にできるエコの心がけにひとつひとつ取り組んでいけたらと思っております。

6月8日 世界海洋の日



6月8日は国連によって制定された世界海洋の日なんだそうです。海の恩恵をみんなで祝う日とのこと。デザインに落としこんだ海洋生物を身につけて、海に思いを馳せるひとときを過ごすのもいいかもしれません。



とはいうものの、まだお出かけをするのが難しい日々がつづいておりますので、今回は自宅で海を楽しめる本をご紹介しましょう。

読んで体験する海の魅力



ご紹介する本を書いた人は、アメリカの生物学者レイチェル・カーソン。アメリカ内務省魚類野生生物局の水産生物学者として研究に携わりながら、多くの著作を残しました。 代表的な著書『沈黙の春』は、自然汚染や環境問題に対して多くの人々の関心を集め、環境保護運動のはじまりとなった記念碑的作品です。彼女の遺作『センス・オブ・ワンダー』は、MUVEILデザイナーの中山路子も大切にしている一冊。MUVEIL 2020SS COLLECTIONでもこの一冊が構想の源泉にあるのが感じられるかと思います。

海への憧れから次第に海洋生物学者の道に進んだ内陸部出身の彼女は、「海の三部作」を構成する『潮風の下で』『われらをめぐる海』『海辺』を遺しました。



「海辺は、寄せては返す波のようにたちもどる私たちを魅了する。」
(『海辺』より)
この一文からはじまる彼女の処女作『海辺』は、海辺がいかに美と魅力に溢れた場所であるかについて海洋生物の図版とともに語られていくので、まるで海岸を探検しながらいきものたちに出会っていくような気分が味わえます。



「自然に触れるという終わりのないよろこびは、けっして科学者だけのものではありません。大地と海と空、そして、そこに住む驚きに満ちた生命の輝きのもとに身をおくすべての人が手に入れられるものなのです。」 (『センス・オブ・ワンダー』より)

こう語るレイチェル・カーソンの著作はどれも特別な知識がなくともすらすらと入ってきて、小説を読んでいるかのような素敵な情景に出くわします。

「大気の海と深海との中間をつねに漂っている不思議な微小生物と、彼らを養う海の花は「プランクトン」と呼ばれている。ギリシア語の「放浪者」を意味する言葉から命名された。」
(『海のなか』より)



ドキュメンタリーの迫力あふれる映像とはまた異なる、ロマンティックに綴られる文章が誘う海洋へのお散歩を楽しんでは如何でしょうか。



最後までお読みいただきありがとうございました。

2020.5