LITERATURE


MUVEIL MAGAZINE
vol.15
AUTUMN EDITION 2

AUTUMN EDITIONとして配信している今月のMUVEIL MAGAZINE。第1弾は、心を解すお茶の時間をフォーカスしました。第2弾は、ティータイムにもピッタリな読書時間にフィーチャーします。

秋は、木々の色どりや日々弱まりつつある太陽の光がどことなくメランコリックな気分にさせる季節。自然と本に手が伸びる秋の夜長に合わせて、作品は勿論ファッションもスタイリッシュな女性作家をご紹介します。



フランソワーズ・サガン

デビュー作がベストセラーとなり、わずか18歳にして富と名声を得たフランソワーズ・サガン。
「物憂さと寂しさがつきまとって離れないこの見知らぬ感情に、悲しみという重々しく立派な名をつけていいものか、私は迷う。」 こんんな冒頭文からはじまる彼女の処女作『悲しみよ、こんにちは』は彼女を知らなくとも耳にしたことがある方が多いかもしれません。

17歳の主人公セシルと父の自由気ままな生活に突如割り込んできた、完璧で大人な女性アンヌ。彼女と過ごしたひと夏の出来事についての物語です。思春期特有の複雑な心の揺らぎが、感性に訴えかける文章で美しく表現されている作品です。



サガンの実生活は、アルコールやドラッグ、数多くの恋愛に事故などスキャンダラスに満ちておりましたが、シャツにパンツを合わせるフレンチカジュアルなスタイルはいつも気品と知性を保っていました。ボーダーやストライプのメンズライクなスタイルにレオパードを合わせる遊び心など彼女のファッションは、作品にも通ずる媚びない彼女らしさが垣間見える気がします。



ヴァージニア・ウルフ

最も有名な女性作家といっても過言ではないヴァージニア・ウルフ。
1928年に女子大生に向けて行った講演をベースにした『自分ひとりの部屋』は、社会における女性の立場について言及し男性優位の社会に異を唱えつづけた女性でもあります。
19世紀に生まれたウルフですが、現代的思考を先取りし瞑想且つ叙情的な彼女の作品は今も色褪せることない文体で、惹きつける作品ばかりです。
代表作の一つ『ダロウェイ夫人は』1920年代美しいロンドンの町で繰り広げられる1日を綴った物語。時間としては1日ではあるのですが、そこに主人公であるダロウェイ夫人や夫、元恋人や自殺を図る青年の人生が交差し40年の時が組み込まれています。私たち自身生活しているときも心ここにあらずな瞬間は幾多となくあるもの。今起きている事から昔の出来事に飛び、また突然目の前の人へ戻り、そこからイメージが広がり・・・と、時空を超えて自由に描くウルフは、そんな「意識の流れを追う」文体に挑戦しつづけた作家です。



彼女のアイコンといえば、センターパートに分けられたニュアンスのあるまとめ髪とロングドレス。クラシカルな雰囲気にうっとりします。



ジョーン・ディディオン

ジョーン・ディディオンはアメリカの小説家でエッセイストです。ヴォーグに勤めたのちライターであるジョン・グレゴリー・ダンと結婚し、小説やエッセイに限らず多くの脚本も手掛けています。80歳になった2015年には、セリーヌのキャンペーンモデルに起用されました。
ベストセラーとなった『悲しみにある者』は、夫を亡くした後の一年間と一日を描くノンフィクション。夫の突然の死と生死の淵を彷徨う愛娘の闘病生活を実際に体験した彼女が愛するものを失った悲しみと立ち直ろうと葛藤する心境を述べています。
日記形式で一日単位で規則正しく書かれていますが、その中で過去の記憶が脈絡なく突如と甦り悲しみや怒り憶測と現在の感情と重ね合わさる叙述は、以下に私たちが記憶を断片的積み重ねて日々を生きてることを上手に自己観察し物事を理解し受け止められたとしても解決しない心境が綴られ感情を突き動かされます。



セリーヌのキャンペーン写真でもわかるように、自身のスタイルをもちファッションアイコンとしても注目されてきたディディオン。1960年代にジャニス・ジョップリンなどの著名人と交友関係がありカウンター・カルチャーの中心人物の一人であった彼女の当時の写真は、洗練されたボヘミアンルックとシンプルな装いが印象的です。



川上未映子

芥川受賞作家であり、現在の日本作家を代表する川上未映子氏。女性のきめ細かな感情や思惑を淡々と言語化する彼女の作品はどれも読み入ってしまいます。
『愛の夢とか』は異なる女性が主人公の7篇の短編集。7人の女性の日常を写しながら、彼女たちの内面の細部までひとつひとつ噛み砕いて丁寧に描く作品は、共感する部分も多くあっという間に読み終わってしまいます。



インタビューやSNSで可憐さのある女性らしい装いが印象的な川上氏。朝日新聞で連載された『おめかしの引力』はファッション好きなら誰もが楽しめる内容です。バックナンバーもウェブに残っておりますので是非チェックしてみてください。

時代も国も異なる4人の女性を紹介させていただきました。 本を読むのは、忙しない日々ではつい敬遠しがちになりますが、言葉の連なりが誘う非日常な世界は新たな発見に満ちています。短篇でしたら紅茶1杯で読めるものばかり。 リフレッシュタイムに取り入れてみてはいかがでしょうか。

最後までお読みいただきありがとうございました。

2020.10