MUVEIL MAGAZINE vol.75 2023 PREFALL COLLECTION STORY 心の奥の声に耳を傾けて ホワイトとキャメルの濃淡、そしてブラックのカラーパレットにミントグリーンとシルバーを添えた2023 PREFALL COLLECTION。 コレクションのミューズとなるのは、「アメリカ・モダニズムの母」と呼ばれるジョージア・オキーフ。 MUVEIL MAGAZINE vol.75では、デザイナー・中山のコレクションへの想いとともに、ジョージア・オキーフについてご紹介します。 カラーモチーフコート / バンダナ柄ニットプルオーバー コーデュロイパンツ / フェルトハット 商品一覧をみる 「私はいつでも自分が何を望んでいるのかを知っていました。」 ジョージア・オキーフさんのインタビューを読んだとき、彼女の作品が内包する魅力をより知れた気がしました。 削ぎ落されて洗練された佇まいでありながら、インパクトが残る作品の数々。 見るもの・食するもの・触るもの・包まれるもの全てにおいて純度の高いインプットから生まれた芸術表現なのだと思います。 心の奥に潜む声にしっかりと耳を傾ける環境を作っていったのでしょう。 2023 PREFALLは強さを表現しながらもスモッキングや手刺繍で私が大切にする温もりを添えています。 纏ったとき穏やかな気持ちで、自らの願いを聞き分けられる。 そんな想いを念頭に置いて制作しました。 ゆっくりご自身と対話がうまれるきっかけとなりますように。 中山 路子 チェックオーバーコート / オニオンレシピプルオーバー チェックプリーツスカート / ドロップネックレス 厳格なまでに望むものを知っていたジョージア・オキーフ。彼女は、花・風景・動物の骨をモチーフとした作品を生涯かけて描きつづけます。 形態の本質を捉えるため見出された大胆な構図と鮮烈な色彩は、すぐに人々を魅了しました。写真家であり後に彼女の夫となる写真家アルフレッド・スティーグリッツとの出会いによって、瞬く間にアート界の頂へ昇りつめます。 世界的なアーティストとして君臨する草間彌生も彼女の影響を受けた1人です。当時まだ 日本に住んでおり無名だった彼女は、オキーフの作品を見て感動したことから手紙を送りました。オキーフは返信し、渡米のサポートをしたとされています。 「私は私が感じたもの、私が探していたものと同等のものを表現しなくてはならないーーー何かをただ模倣するのではなく」 ニューヨークでモダニズム作家の代表格として評価されても煌びやかな世界に染まることなく、自身の表現を見つける孤高の旅をつづけました。 「空気も空も、星も風もすべてがまるで違うのです。」 オキーフがそう語っていたのは、ニューメキシコ州。ネイティブアメリカンとヒスパニックの文化が融合したこの土地の景色を描くため毎夏訪れていましたが、夫の死後ついに移住を果たします。そのとき既に60歳を越えていました。 オキーフが第2の人生に選んだ舞台は、彼女の風景画をそのまま具現化したような荒野ゴーストランチとその近くにある比較的穏やかな気候のアビキュー。ゴーストランチは彼女のインスピレーション源ではありましたが、年間を通して住むには厳しい環境です。アビキューの家は元々廃墟同然でしたが、家の広場にある片側にドアがついた長い壁こそ自身が求めていたものだと3年もかけて改修します。 アドビと呼ばれる泥に藁を混ぜたレンガでつくられる伝統的なアドビ建築とネイティブアメリカンの共同住居の様式に、鉄やガラスといったモダンな素材を融合させた美しい住まい。壮大な景色をフレーミングするため大きな窓や、白いシーツを使用したカーテンや彼女が散歩で集めた動物の骨や石の数々。 唯一無二のセンスは洗練されたインテリアと化し、まさしくオキーフによるオキーフのための住まいです。 アビキューの自宅では野菜や花の栽培も手掛けていました。育てるところから調理まですべて自身で行っていたオキーフの食に対するこだわりは、彼女のレシピ本がでているほど。 今日の憧れである丁寧な生活を、実践されていました。 オキーフの魅力は自身のファッションセンスからも垣間見れます。作品制作時の色彩に影響を与えないために、白と黒しか着用しませんでした。20世紀初頭のファッショントレンドには目もくれず、自身で素材からディテールまでこだわって衣服を制作するほど。ニューメキシコに移住後、デニムやバンダナ、そしてハットなども取り入れた彼女のファッションはどれもかっこよく真似してみたくなるアイデアに溢れています。 衣食住どれをとっても彼女だけのスタイルを確立したのは、オキーフ自身の望みを叶えるため。それは絵を描くことでした。 「絵は人生をつくっているすべてのことをする、すべての理由を貫いている一本の糸のようなものです」 何が一番大切で、そのためには何をするべきなのか。荒野での散歩が日課だったオキーフは愛した大地と自身の声と対話する時間だったのではないでしょうか。 フラワーレースジャケット / ハートパッチプルオーバー フラワーレースパンツ 2023PREFALLでは、強さを内包しながらもリラックスした気持ちで纏えるコレクションです。ジョージアオキーフのように、自身の望みに耳を傾けながら歩みつづけるためのささやかな力になりますように。 MUVEIL MAGAZINE vol.75はここまで。 ジョージアオキーフにまつわる写真はどれも素敵で、ファッションもインテリアもアイデアがたくさん散りばめられていますので是非チェックしてみてくださいね。 最後までお読みいただきありがとうございました。 2023.5