vol.96 2024 PREFALL COLLECTION COLLECTION STORY

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MUVEIL MAGAZINE
vol.96
2024 PREFALL COLLECTION
COLLECTION STORY

芯を強く、凛として生きること

昭和時代のクラシックな表情を添えながら、凛とした女性をイメージした2024 PREFALL COLLECTION。
イメージした女性は、昭和を代表する女優・高峰秀子。生涯300余本の映画に出演し今もなお人々を魅了しています。

MUVEIL MAGAZINE vol.96では、コレクションのミューズをご紹介。



1924年、北海道の函館市で生まれた高峰秀子。母の早逝により叔母の養女となり、幼少期から映画に出演し、天才子役として人気を博しました。その後、山本嘉次郎監督との出会いが、「綴方教室」「馬」など彼女の少女期の代表的な作品を生み出すきっかけとなります。

26歳で半年間フランスに留学し、帰国後は映画「二十四の瞳」「浮雲」などで国内外の映画賞を受賞。日本映画界のトップ女優として頂点に立ちました。

人気絶頂の中で、松竹の助監督だった松山善三と結婚。以後「女が階段を上るとき」「恍惚の人」など、数多くの作品に出演しながらも、55歳で出演した「衝動殺人 息子よ」を最後に引退します。



彼女は演技だけでなく文筆にも優れ、多くのエッセイを残しました。
誰もが知る大女優ではなく、ただのひとりの女性として自分だけの思い出をつくることを動機に過ごしたパリでの日々を綴った『巴里ひとりある記』や、日本エッセイストクラブ賞を受賞した『わたしの渡世日記』など26もの著作を残しています。

歯に衣着せぬ潔い語り口調で綴られる文章は爽快。

感性だけなく、多忙の女優時代から広辞苑を愛読するほど独学で読書を続けてきた彼女の知的好奇心がひしひしと伝わります。



女優・文筆家としての顔だけでなく、彼女のライフスタイルのファンである方も多いのではないでしょうか。

遺作となった『高峰秀子 暮らしの流儀』や、彼女の死後に出版された書籍では愛用品の写真が多く掲載されていますが、凛とした暮らしぶりが映し出されています。

「亀の子ダワシ一つ、私の気に入らないものは、この家には何もありません」と語るように、審美眼にかなったものだけを欲張らずに、細部まで丁寧に扱う。

ピカピカに輝くキッチンツール、つややかに磨かれた木製の家具、きちんと手入れされたレザーパンプスやスリッパの数々。丁寧な暮らしのもとで愛用された品の数々は使われた痕跡があるのに、まるで彼女の文章のように研ぎ澄まされた美しさを放ちます。



「自分から女優というものをとってしまったら何もない、 そんな人間にはなりたくないと思った。」
そう語った彼女の人生はどの部分を切り取っても、彼女の美学が詰まっています。

高峰の養女であった斎藤明美氏が綴った「高峰秀子の流儀」の目次を見ると、その凛とした生き方を支えた信条が垣間見えました。
「動じない」「求めない」「迷わない」「甘えない」「怠らない」「驕らない」

背筋を伸ばしながらも人生を歩む楽しみを教えてくれる指針のとなる言葉の数々。
興味ある方は是非本を手に取ってみてください。




MUVEIL MAGAZINE vol.96はここまで。
最後までお読みいただきありがとうございました。

2024.07